外国人観光客は日本旅行で何に困っている?訪日前・滞在中の不満とニーズを解説

日本旅行中に渋谷駅でスマートフォンを確認する外国人旅行者

日本を訪れる外国人観光客が増えるなか、観光地や宿泊施設、飲食店などではインバウンド対応の重要性が高まっています。

一方で、日本を旅行する外国人は、実際にどのような場面で「困った」「わかりにくい」と感じているのでしょうか。

外国人旅行者のニーズを考えるときに重要なのは、サービスを提供する側の想像だけで考えるのではなく、旅行者が実際に感じている不便やストレスを知ることです。

この記事では、観光庁が2026年4月に公表した「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」をもとに、日本を訪れた外国人旅行者が困っていることや、その背景にあるニーズについてわかりやすく解説します。

外国人観光客は日本旅行で何に困っている?

観光庁では、日本から出国する前の訪日外国人旅行者を対象に、日本旅行中に困ったことについて継続的な調査を行っています。

令和7年度の調査は、2025年11月18日から2026年1月13日にかけて、成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、福岡空港、新千歳空港で実施され、4,110件の回答が集められました。

調査結果を見ると、旅行中に「困ったことはなかった」と回答した人は43.7%でした。

日本の旅行環境そのものに大きな問題があるというわけではありませんが、裏を返せば、半数以上の旅行者が何らかの困りごとを経験していることになります。

主な困りごとは次のとおりです。

旅行中に困ったこと割合
ごみ箱の少なさ17.2%
施設等のスタッフとのコミュニケーション15.4%
観光地や地域の混雑12.9%
交通機関の利用11.3%
多言語表示の少なさ・わかりにくさ10.9%
クレジット/デビットカードの利用10.7%
入国手続き10.3%

ここからは、特に旅行者が困っているポイントを詳しく見ていきます。

ごみ箱が少なく、捨てる場所がわからない

今回の調査で最も多かった困りごとは、「ごみ箱の少なさ」の17.2%でした。

これは前回調査から4.7ポイント減少しているものの、引き続き最も多い項目です。

日本では街中の公共ごみ箱が少なく、旅行者が飲み物や食べ物を購入したあとに、容器や包装をどこに捨てればよいのかわからないケースがあります。

特に食べ歩きを楽しむ観光地では、ごみを持ったまま次の場所へ移動しなければならないことが、旅行者にとって意外なストレスになる可能性があります。

ごみ箱そのものを増やすことが難しい場合でも、店舗や宿泊施設が「どこでごみを捨てられるのか」「施設内で処分できるのか」をわかりやすく案内するだけでも、旅行者の負担を減らせます。

スタッフとのコミュニケーションが難しい

次に多かったのが、「施設等のスタッフとのコミュニケーション」の15.4%です。

コミュニケーションで困った場所としては、飲食店が38%、鉄道駅・バスターミナルが27%と多くなっています。

注文方法がわからない、質問したいことが伝わらない、施設のルールを理解できないなど、旅行中にはさまざまな場面でコミュニケーションが必要になります。

注目したいのは、コミュニケーションに困った旅行者の68%がICTツールを利用して対応していることです。

ホテルのフロントでスマートフォンを使ってスタッフと会話する外国人旅行者

つまり、すべての施設が多言語を話せるスタッフを配置しなければならないわけではありません。

翻訳アプリや多言語FAQ、Web上の案内、AIチャットなど、デジタルツールを組み合わせることで、スタッフと外国人旅行者の双方の負担を軽減できる可能性があります。

電車・バスなど交通機関の利用が難しい

「交通機関の利用」で困った旅行者は11.3%でした。

特に都市部では新幹線以外の鉄道、地方部ではバスの利用に困ったという回答が目立っています。

具体的な困りごとでは、「目的地までのルートの検索」が45%、「乗り場・降り場の場所の特定」が38%となっています。

日本の駅で路線図とスマートフォンを確認する外国人旅行者

日本人にとっては当たり前に利用している交通機関でも、初めて日本を訪れた旅行者にとっては、路線、乗り換え、駅名、バス停、運賃の支払い方法など、理解しなければならない情報が数多くあります。

宿泊施設や観光施設でも、単に最寄り駅を案内するだけではなく、「どの路線を使うのか」「どこから乗るのか」「目的地までどのくらいかかるのか」まで案内できると、旅行者にとってより実用的な情報になります。

多言語表示が少ない・わかりにくい

「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」で困った旅行者は10.9%でした。

困った場所は、都市部では鉄道駅構内が30%、地方部では飲食店が23%と多くなっています。

多言語対応というと、英語の案内を追加することだけを考えがちですが、大切なのは単純な翻訳だけではありません。

旅行者が必要としている情報を、必要なタイミングで見つけられることも重要です。

実際に、多言語表示で困った旅行者の57%がICTツールを利用して対応しています。

WebサイトやQRコード、多言語のデジタル案内などを活用すれば、紙の案内を大量に用意しなくても、多くの言語に対応しやすくなります。

クレジットカード・デビットカードが使えない

クレジットカードやデビットカードの利用で困った旅行者は10.7%でした。

特に困った場所として最も多かったのが飲食店で、32%を占めています。

海外ではキャッシュレス決済が日常的に使われている国や地域も多く、旅行者が「カードで支払える」と考えて来店するケースもあります。

すべての決済方法に対応することが難しい場合でも、利用できるカードや決済方法を入口・メニュー・Webサイトなどで事前に明示することは有効です。

「支払いの直前になって使えないことがわかる」という状況を減らすだけでも、旅行者の不安やトラブルを抑えられます。

人気観光地の混雑もストレスになっている

「観光地や地域の混雑」で困った旅行者は12.9%でした。

都市部のみを訪問した旅行者では14%、地方部のみを訪問した旅行者では6%となっており、特に都市部で混雑による不便を感じる人が多くなっています。

混雑によって困った内容を見ると、「スムーズに移動できなかった」が66%、「見たいものが十分見られなかった」が47%、「混雑状況がわからなかった」が33%でした。

観光地の混雑そのものをすぐに解消することは難しくても、旅行者が事前に混雑状況を把握できれば、訪問する時間を変えたり、別の観光スポットを選んだりできます。

そのため、リアルタイムの混雑情報や、比較的空いている時間帯、周辺の代替スポットなど、旅行者が自分で行動を選択できる情報を提供することも重要になっています。

外国人旅行者が求めているのは「迷わず行動できる環境」

ここまで見てきた外国人旅行者の困りごとは、一見するとそれぞれ別の問題に見えます。

  • ごみをどこに捨てればよいかわからない
  • スタッフに質問が伝わらない
  • 目的地までの行き方がわからない
  • 案内表示を理解できない
  • 利用できる決済方法がわからない
  • 観光地がどのくらい混んでいるかわからない

しかし、共通しているのは「必要な情報にアクセスできず、次にどう行動すればよいかわからない」という問題です。

外国人旅行者にとって快適な環境とは、単に英語表記が多い環境ではありません。

  • 必要な情報を自分で見つけられる
  • 自分が理解できる言語で確認できる
  • 移動方法や施設の利用方法がわかる
  • スタッフと最低限の意思疎通ができる
  • 困ったときにスマートフォンから解決方法を探せる

こうした「迷わず行動できる環境」をつくることが、これからのインバウンド対応では重要です。

コミュニケーションで困った旅行者の68%、多言語表示で困った旅行者の57%がICTツールを利用しているという調査結果からも、スマートフォンやデジタルツールが旅行中の問題解決に重要な役割を果たしていることがわかります。

ホテルでスマートフォンから交通・飲食・翻訳・観光情報を確認する外国人旅行者

宿泊施設や観光事業者ができること

外国人旅行者の困りごとを減らすために、必ずしも大規模な設備投資や、多言語を話せるスタッフを大量に採用する必要はありません。

まずは、旅行者が必要とする情報を整理し、わかりやすく提供するところから始められます。

  • Webサイトの多言語対応
  • チェックイン・チェックアウト方法の多言語案内
  • 館内設備や利用ルールのわかりやすい説明
  • よくある質問をまとめたFAQの整備
  • 最寄り駅や空港からのアクセス案内
  • 利用できる決済方法の事前表示
  • 周辺の飲食店や観光スポットの情報提供
  • 翻訳ツールやAIチャットなどの活用

特に宿泊施設は、外国人旅行者が滞在中の「拠点」となる場所です。

宿泊そのものに関する情報だけでなく、交通、飲食、観光、地域のルールなども含めて情報へアクセスしやすくすることで、旅行者の安心感や満足度向上につながります。

重要なのは、すべてをスタッフが口頭で説明することではありません。人による対応とデジタルによる情報提供をうまく組み合わせることで、現場の負担を増やさずに受入環境を改善することもできます。

まとめ|外国人旅行者の「困った」を知ることがインバウンド対応の第一歩

外国人旅行者が日本で感じている困りごとは、言語だけではありません。

ごみ箱、コミュニケーション、混雑、交通、多言語表示、決済など、旅行のさまざまな場面に課題があります。

一方で、その多くは「必要な情報を、必要なときに、理解できる形で届ける」ことで改善できる可能性があります。

インバウンド対応というと、大がかりな設備や専門スタッフの配置をイメージするかもしれません。しかし、Webサイトや案内表示を見直したり、FAQを整備したり、翻訳・AIなどのデジタルツールを活用したりすることも、重要なインバウンド対策です。

まずは外国人旅行者が実際にどこで困っているのかを知り、自社の施設やサービスで同じ問題が起きていないかを確認することから始めてみましょう。


参考:観光庁「令和7年度 訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」(2026年4月28日公表)

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